2024/08/11 14:44

ひとつ前の記事「suieの生地選びについて②」からの続き



suieでは受注生産しているシリーズとは別に「一点ものシリーズ」という、手仕事の布や実際の民族衣装のパーツを使用したアイテムがあります。素材の時代や国はさまざまですが、織りや染め、中には糸を紡ぐところから手作業で行われたものも。こうした素材には不揃いな部分が多々見られますが、それが特徴であり、一点ものならではの魅力だと考えています。 



インドの古いグドゥリーで仕立てたコート


機械織りは高速で糸が往復し、その際に糸が強く引っ張られるため均一で一定以上の強度のある糸でないと簡単に切れてしまうのですが、手織りはやらかく撚られた糸や均一でない糸も織ることができます。糸を紡ぐ時の太さの違い、織る時の糸の引き具合や力加減のほんの少しの違いで小さな歪みが出て、その細かい歪みが全体で見た時に独特の凹凸や風合いとなって現れるのです。 


手仕事の布と向き合っていると、時々「ここから別の日に織ったな」とか「きっとここから別の窯で染めた糸に変えたな」といった変化に気づくことも。時にはおそらく以前使ったのであろう、まったく別の鮮やかな色の糸くずや葉っぱの繊維などが一緒に織り込まれていることもあります。普通に考えたらミスと捉えられるような、その歪みやエラーをむしろ愛おしく思えるというのが手仕事の味であり、それを好んでくださるお客様が多くいることは言わずとも共有できている感覚があるんだな、とうれしく思います。 

 

そして手仕事の不揃いな部分は愛おしい反面、服に仕立てる際に手間がかかります。生地巾もバラバラだったり、シミやダメージなどを避けるようにパターンの配置を考えたり、生地の持ち味を最大限に活かすために毎回パターンを微調整しながら作るのですが、そうやってかかった手間と時間によって愛着が増しているのかもしれません。 


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