2024/08/11 14:44
「suieの生地選びについて①」からの続き
序盤でも触れましたが生地選びとデザインの関係性について、私がいつも意識していることを少し具体的にお話します。
まずは、suieの定番アイテム「山岳民族ドレス」について。 このドレスに使う生地はハリのある素材です。この「ハリ」は生地の大事な要素で、ハリのないやわらかな素材は着る人の体に沿ったシルエットになり、逆にハリのある素材はパターン本来の型が出やすくなります。生地は糸の密度が低いと織りに隙間ができるのでガーゼのようにやわらかく、密度が高いと透け感のない紙のようにパリッとしたものに仕上がります。
山岳民族ドレスは立体的なパターンが特徴なので、その独特のシルエットがきれいに出ること、そして、羽織りの要素を加味して適度な厚みのある生地が求められました。
実際に選んだ生地は糸の密度が高く、素材に和紙糸が使用されていることで独特のハリとコシがあり、かつ見た目より軽いという点が持ち味。和紙糸が使われている生地はめずらしいのですが、日本では奈良時代からあると言われる歴史の古い糸だそうで、その背景も決め手のひとつになりました。
次に、セットアップとしても人気の「カンフーシャツ」「Volendam Pants」の生地。この2着にはいずれも先染めヘリンボーンの生地を使用しています。
この「先染め」というのは糸の状態を指していて、先に糸を染めて生地を織ることを意味します。反対に、先に白糸で織ったものを生地の状態で染めることを「後染め」と言います。後染めは色を均一に仕上げられますが先染めは縦糸と緯糸の色を変えることができるので、単色に見える生地も実は2色の糸で織られているという場合も。細かいムラのような奥行きのある色の見え方になるのが特徴です。
suieで使っている先染め生地には縦糸は黒、緯糸はブルー(糸の状態で見るとより鮮やかです)でネイビーに見えたり、縦糸は白、緯糸はブルーで淡い水色に見えるものなどがあります。複数の色要素を含んでいるせいか、先染め生地はコーディネートの際に相性の良い色味の幅が広がるような気がしています。また、この生地には「ヘリンボーン」という魚の骨のような織柄があるのも特徴。織柄はいわゆる「柄」というほどには主張せずとも、フラットな生地とは違った表情があるのでコーディネートにも奥行きを与えてくれるのです。
もう少し柄が大きく、ウール混素材を使った秋冬のアイテムで見たことがある人が多いかと思いますが、定番のヘリンボーンより細い糸を使い、綿麻素材でオールシーズン使える使えるこの生地は特にお気に入りです。