2023/12/22 11:37

今から6年前、ラオスに訪れた時に一目惚れした布がありました。それは藍染めで何段階かの濃度に染め分けられた糸を使い、柄を織り上げているラオスの伝統的な布で、現地では女性が巻きスカートとして着用したり、部屋の敷物や壁掛けの装飾として生地の厚みによって使い分けられているもの。布を見つけたお店の人にその伝統織物をしている村の場所を訊ね、一目惚れの衝撃の勢いに任せてその地へ向かいましたが、途中で交通網が途絶えてその旅ではたどり着くことができませんでした。

この6年間ずっと頭の片隅にあったその地へ、先日ついに訪れることができました。


タイからラオス入りし、時刻表がない、いつ出発して到着するのかもわからないようなローカルなバスを乗り降りしながら、山道を4時間ほど行った先にその場所はありました。そこは、高床式の古い様式の家とコンクリート造りで現代的な平家が建ち並ぶ、20分もあればゆっくり一周できるくらいの小さな村。スーパーやレストランなどはなく、自給できないものは10日に一度出るマーケットで購入して生活していると言います。村を歩くと、そこここで織りをしている風景に出会いました。もちろん綿花を栽培する人たちにも。


綿がこんな風に植物に付いているのが今さらながら不思議



村を歩くと、家の軒先や高床の家の下で織っている女性たちを見かけました



綿は収穫したら軒先で乾燥させ、種を取り除き、綿を弓で弾いてふわふわにするなどの下準備をしてから糸に紡いで染めます。藍染め以外にもマンゴーの葉やチェスナッツなど、さまざまな色に染めていました。糸の色に改めて注目する機会もそうないのでじっくりとその色味を観察し、こうして自然から抽出されたのだと思うとさらに魅力が増すようでした。

収穫下綿を干して乾燥させた状態。まだ中には種が入っています。種を取り除いた後に弓で弾いてふわふわにさせるのですが、実際にやってみると意外と難しくて手が疲れました



次の糸を紡ぐ工程をしやすいように棒に巻きつけてまとめます。撚りながら糸にしていくのですが、実際にやるとこれもとても難しい!切れてしまったり太い塊になってしまったりして均一な一本になりません



この村では糸の状態でそれぞれの色に染めます



藍以外にもチェスナッツやマンゴーの葉など、植物で染められた色とりどりの糸



柄を数種類の色で織り分けるには、緯(よこ)糸一列を通す時にも「ここからここまでは薄めの藍色」「こっちからここの経糸までは濃い藍色」というように、通す際に分けなければいけません。その様子を見ていると、織るというよりまるで編んでいるよう。私も手紡ぎ、手織りの体験をさせてもらい、一見わけもなくやっているように見えるその工程の難しさを実感しました。


村の女性たちは12歳頃から織りに関わり始めるのだとか。自分たちの食べる野菜やお米を育て、料理をして、そうした日常生活の流れのひとつとして織りがあるんだなと思いました。こうして布が作られている村を訪ね、織り手から私に、また次の持ち主への手に渡していくことが、帰国して旅を振り返りながら考えるとなんだか不思議に感じます。私が現地で感じた温度感をなるべく保ったまま、つないでいくことができたらうれしいです。


緯糸の色を使い分けながら編む様に織っていました



布や竹細工の入れ物、お米や野菜お肉などほとんど自分達で育てたもの